カミングアウト・その前

最終更新日: 2003年4月18日 /修正: 2007年5月

「カミングアウト」とは?
"Coming out of the closet"(直訳:押し入れの中から外に出ること?)という言葉から。 自分のことに関する秘密を他者に打ち明けること。 略して「カムアウト」、「カム」とも。

きっかけ

2003年1月。 2002年10月から女性ホルモンを使い始めてから3ヶ月経過した。 そして、体つきまで変わってくるのを感じた。

「男でいるのは嫌だ」「Hするのは嫌だ」という気持ちを抑えるために始めたことだった。 外見の変化にも「違和感」を感じることは全くなかっので、気持ちが確かめられたような気がした。

家族にはなるべく早く打ち明けるつもりでいた。 ごまかし続けることも考えたけど、それではずっと「うそつき」にならなくてはいけなくなる。

……。

今まで充分過ぎるほど長い間話せないできた。 これからもずっと隠し通すことの心の苦しさを像したら……。 全部を隠していたつもりではなかった。 ボク自身でさえ最近まで誤解していたり気づかなかったりしたこともあったのだ。

そして……。 あとはみんなに自分の気持ちをどう切り出したらよいかという問題が残った……。

封じ込められた気持ち

本心をみんなに打ち明けても、混乱させて気味悪がらせるだけ……。 ボクだって見苦しくて変態みたいだってずっと思っているんだから、はた目から見ても気味が悪いだろうということはよく分かっている。

鏡を見たことがないわけがない……。 正直言って、他人からどう思われるか、不安な気持ちになる。 自分だけが不快でいるようにすれば、まわりの人たちを不快にさせることはないのだから、このままただの変わり者でいた方が楽かも知れない……。

言葉遣いや仕草が女っぽいというわけではないので、その辺から怪しまれるということはないだろう。 恋愛する様子が全くなくてずっと独身でいることで不審に思われることはあっても、真の気持ちに気づかれることはないだろうという自信はあった。

隠してきたとは言っても、自分自身でもよく分からなかったことが多い。 半分気が付いていたけど、半分は気が付かなかったという感じ。 隠していたのは事実だけど、実はその半分くらいは自分でも気づかなかったことだった。 気づくのが怖かったので、気づかない振りをしていただけなのかも知れない。

本心を心の奥の方に無意識のうちに埋めてしまったので、埋めた場所が自分でも分からなくなった。 そのうち他のことに考えを集中させるようになって、埋めたという事実さえも忘れようとしていた。 気持ちを封印した後、更に封印したという記憶までも忘れようとして、いつの間にか自分でも気づかなくなってしまったのかも知れない

墓場まで……

「自分一人だけが我慢していれば何事もなく済むことだ」
「せっかくここまで誰にも分からないようにしてきたんだから……」
「ただの自己満足のために、人に迷惑をかけてもいいのか……」
「人を愛せないなんて、そんなの心の冷たい人間だ」
「こんなこと思うなんて、ただの変態だ」
「現実逃避したいから、色々と理屈を考え出して正当化しようとしているだけだ」
……など、いろいろ考えて気持ちを封じ込めようとしてきた。

もし、ボクと似たタイプの人に出会ったことがあれば、相談できたかも知れないけれど……。 いくら自分のことが変わっているのが好きだとはいっても、まわりに似た人がいないとやっぱり不安を感じることもある。

…………。

そうこうしているうちに、ここまで長い時間がたってしまった。 こうなったらこの気持ちを墓場まで持っていけば良いと思った。 ボク一人が黙ってさえいれば、この「不快感」は誰にも気づかれない。 余計な波風を立てずに済む……。

でも……。 「生きることは我慢すること」とも言うけれど、限界があるのかも……。

ここまでの年月はけっこう長かったから、錯覚だとか、気のせいだとか、一時的に思っていることだとは思えない。 時間がたつのが早く感じられるようになってきたとは言っても、このままずっと……と思うとやっぱり辛く感じる。

決意

そして……。 ついにカミングアウト(告白)することを決意した。

自分のことを全部さらけださないと、相手を騙していることになってしまうと思った。 良心の呵責(かしゃく)みたいなものを強く感じてくるようになっていたのだ。

みんなにはいい迷惑になるのかも知れないけど……。 隠し事をしているという負い目をなくして楽な気持ちになりたいと思った。 そのためには演じるようなことをこの辺でやめて、素の自分を分かってもらうしかないと思った。 その結果どんな風に思われてもいい、という覚悟もできた。 本心を知られるのは恥ずかしいと思っていたけど、やっと勇気が出てきたのだ。

今まで誰にも見せなかった素顔を初めて見られるようなことだから恥ずかしいし、理解されるようになるまでは長い時間がかかるだろう。 もしかしたらずっと理解されないままかも知れないという不安もあった……。

でも……。 心の「根っこ」の部分を知ってもらいたいという気持ちの方がずっと強くなっていた。 そろそろ自分らしく生きたいという気持ちは抑えられないくらいになっていた。

タイムリミット

2003年1月……女性ホルモンを始めて3ヶ月がたとうとしていた。 話すのはなるべく早い時期にしようと思っていた。

もし反対されたとしても「引き返す」つもりなんて全然なかったけど、完全に引き返せない所まで行ってからでは、「フェア」じゃないような気がした。 少なくても「回復不能」になる前には知らせておきたいと思っていた。 置いてきぼりにするようなことだけは避けたかった。

(※ 女性ホルモンを継続して服用すると、半年から1年で男性機能がなくなるということだったので)

ちょうど胸が目立ち始めてきた頃だったので、いざとなったら見せて「武器」にするつもりもあった。 結果的にその必要はなかったのだけれど、そこまで思い詰めていたのだ。

母に……

家族に話すと言っても、一対一で話さなくてはいけないと思った。 全員一緒なら一度で済むけど、緊張感がそれだけ大きくなるだろうし、一人一人にする方が相手によって話す内容を変えることだってできる。

まず母に打ち明けようと決めていた。 母の性格から考えると、「そんな子に育てた覚えはない!」とか「世間に顔向けできない!」など、ドラマによくあるような展開にはならないだろうと思っていた(笑)。 ただ、ボクに何も文句を言わないで責任を一人で背負い込んでしまうだろうということは予想できたので、誰のせいでもないということを分かってもらえるようにしようと思った。 今の自分で良かったということをきちんと分かってもらうというのが「最優先事項」だった。


▼ カミングアウトのために書いておいたメモ (2003年1月)

2003年10月30日

2003年1月上旬…。
どうやって話を切り出したらよいのかをずっと考えても、たくさんあり過ぎて頭の中だけでは全然まとまらなかった。 それで、話さなくてはいけないことをとにかくノートに書き出していった。 それをまとめると次のようなものになった。

※ 当時の日記から書き出したものなので、特に「結婚・家庭」のところなど、現在思っていることとは違うこともある。

▼ 性別

自分は中性だということ。
心の性は中性なので、体の性を近づけるため、女性ホルモンを使うことにした。

性別は男で女の人が好きだけど、その感情は「未熟」なものであること。
心の中の男女の部分の境界があやふやで、どっちにも属していない感じがする。
自分でも気持ちが悪いことだとも感じるけど、女の子になりたいというようなあこがれの気持ちが昔からある。

▼ 思い当たること

Hの経験はない。一人Hはするけど……。
マンガはおもしろいのもあるので読むけど、写真ばかりの本は見ない。
風俗のお店とかにも行きたいと思わない。
もしタダだとしても面倒だから行かないだろう。

恋愛経験、Hな経験はない。
夢に見たこともないので、無意識の中にもないのだろうと思う。
夢の中に「裸」が出てきたことはない。(実際にも見たことがない)
でも、それでも今までずっと平気できている。

恋愛物の作品は苦手。
映画、ドラマ、音楽など、恋愛がテーマになっているものが多いので、いつの間にかそのジャンル全体に興味をなくしているところがある。
今でもアニメとか子供っぽいものが好きなのも、安心して見ていられるからだとも思う。
(暴力的なものは嫌いだけど……)
いろいろ空想できるし、精神的な結びつきが強く感じられたりするのが好き。

▼ 女性ホルモンについて

体の性別をずっと嫌だと思っている。
小さいころから自分が男だということが嫌だった。
月日が経っても違和感は全然消えなかった。
体が男のままずっと歳を取っていくかと思うと、辛いものを感じる。

インターネットで薬が入手できることを知って、いてもたってもいられなくなった。
体が心に近づくことになるから、一番良い解決法だと思った。
怪しいところではなく、なぜ男性が入手するのか目的を理解している良心的なところから入手できるし、思ったよりも高くなかった。

去年の10月から女性ホルモン剤を飲み始めて、3ヶ月経過した。
正直言って「後戻りできない」ことに少し不安もあったけど、始めてからはそんな気持ちがすぐに消し飛んだ。
胸が出てきたりして、男じゃなくなってきているのが目に見えてくるようにもなってきて、男性の生理現象もなくなっている。(もう2ヶ月以上ない)
長く続けると子供ができなくなるけど、やめるつもりはない。

男性の機能が止まってきているのを実感できている。
昔から抱えてきた悩みがなくなってきて、とてもほっとしている。

▼ 結婚・家庭

女の人が好きだけど、程度が弱い……?(未熟?)
中性的な性質なのかも知れない。

結婚したいと思ったことはない。
そういうイメージが全然思い浮かばない。
今の「男」だって嫌なのに、これに「夫」と「父」という立場まで加わると……。
そういうのが頭の中で全然イメージできない。

性の部分も大事なものだし、女の人は好きだからできないことはないかも知れないけど、相手をだましているみたいなことになると思う。

好きな人に対してボクにとっては「嫌なこと」をして、それで生まれてきた子供も愛するなんてことはとてもできそうにない……。

女の人は好きだし、子供も好きだと思うけど……。
もし家庭を持つようになったら、ボク一人だけの問題ではなくなってしまう。
きっとみんな不幸になってしまうだろう。
子供好きだとは思うけど、自分の子供を持ちたいと強く思うことはない。
(肉親だから好き、というような感情が薄いのかも知れない)

※ 結婚してお互いに幸せになれるような人が見つかる可能性がゼロとは言えないけど、変に期待をさせるよりは、はっきり「しない」と言った方がいいかも……。

▼ その他

自分が変わっていることが好きで、アマノジャクな性格も割と気に入っている。
一般的な男性でなくて良かったとも思っている。(女性にはなりたかったとも思うけど……)
人とは違うけど、ボクにとってはこういうのが自然な気持ちなのだと思う。

▼ 話す時のポイント

今までのことを質問されたら素直に答える。
(女の人の服を持っていることとかも……)

なるべく涙は見せないようにする。

偶然だったということで、誰の責任でもないことを強調する。

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